胚移植の前後に鍼灸を受けると妊娠率が上がるという研究論文について

鍼灸が不妊治療に効果的である可能性を示し、不妊治療の分野で注目された論文があります。2002年、医学誌『Fertility and Sterility』に掲載された、ドイツのPaulus(パウラス)らによる研究です。体外受精を受ける160名を対象に、80名には胚移植の直前と直後に鍼灸を行い、残る80名には鍼灸を行わずに胚移植を実施しました。その結果、臨床妊娠率は「鍼灸を受けたグループ:42.5%」「鍼灸を受けなかったグループ:26.3%」となり、鍼灸を受けたグループでは、臨床妊娠率が約16ポイント高いという結果が報告されました。

当院でも、移植前後の鍼灸を行っています

当院でもこの研究で考えられているメカニズムを応用し、移植前後の緊張をやわらげ、自律神経や血流など、身体の状態を整えるための施術を行っています。私は以前、都内の有名不妊専門クリニックで、専属の鍼灸治療ルームを運営していました。そこで一番オーダーが多かったのが、この「移植前後の鍼灸」でした。懐かしいです。鍼灸は統合医療の分野でありながら、研究も行われています。当院でも、こうしたエビデンスを参考にしながら、病院での不妊治療と並行して、その方の身体の状態に合わせたアプローチを行っています。

移植前後だけではなく、できれば移植前の周期から

なお、子宮周辺の血流や身体の状態を整えるという視点では、移植の直前・直後だけではなく、少なくとも移植前の周期からの鍼灸をおすすめしています。また、移植にあたり、着床に関係する要因は子宮の血流だけではありません。胚の状態、子宮内膜、ホルモン、子宮の状態など、さまざまな要因が関係します。そのため、これまでの治療経過や現在の状態もおうかがいしながら、移植に向けて何ができるのかを一緒に考えていきます。

「リラックス」で着床率が向上するという研究結果も

また、子宮が過度に緊張・収縮していると、着床率が下がる傾向があるとも言われています。「移植後に、メディカルクラウン(病院道化師)が15分ほど笑わせた患者は妊娠率が高かった」という研究結果も報告されているほど、着床率を高める上で心身をリラックスさせることは非常に重要です。そのため、当院では、鍼灸によって副交感神経を優位にし、着床しやすいリラックス状態へと導く治療を行っています。不妊治療の中でも、移植前後は特に緊張しやすいタイミング。初めての鍼灸を、初めての治療院で、そのタイミングで受けるのは、かえって緊張してしまうかもしれません。安心して移植の日を迎えるためにも、できれば少し早めにご相談くださいね。